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2011年12月18日 - 2011年12月24日

2011年12月24日 (土)

ホームはミュージアムだ

商談、会議、デスクワーク、取引先との会合会食。

来る日も来る日も仕事に追われる現代のビジネスマン。

身体の疲労と共に精神的なストレスも蓄積の一途、たまにはガス抜きでもせねばと
会社帰りに赤提灯の安居酒屋で酒肴をたしなむも、口をついて
出るのは上司への愚痴やら一足先に昇進していった同僚へのやっかみ、
給料に反して上昇が止まらないγGTP等、陰鬱極まりない話ばかり。
かえってストレスの再生産、悪循環となり、このまま末期症状を迎えれば
世をはかなんで自ら命を断つという悲劇的な結末は到底、免れない。

そんなの嫌だ。死にたくない。ふざけるな、何なんだ。
じゃあどうすればいいのか。この現実へ圧倒的な絶望感を癒すには
方法はもはやひとつしかないと言っても過言ではないだろう。

美しいもの、豊穣な感性に触れる事、すなはち美術鑑賞である。

しかし、慌てて上野の西洋美術館に出向いてみようものなら、そこは芸術を浴びにくるライバル達で溢れ返っている。

壁面に並べられた絵画達の前の通路をベルトコンベアーの上の工業製品のごとくぎゅうぎゅう詰めに列をなして微速前進。
気に入った、もしくは美術史上名高い作品の前で細かい文字の解説パネルを熟読して肉体疲労に眼精疲労を併発。

そこには本来の目的たる精神の充足は微塵もない。


だめじゃん、もう死ぬしかないじゃん。

いやいや世をはかなむのはまだ早い。
美術鑑賞を心おきなく、誰にもじゃまされすに堪能できるスポットが大都会にあったのだ。

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夜の京王井の頭線渋谷駅、降車ホーム。

平日の22:00過ぎ、この時間になるとすっかり人もまばら。暗く、寂寂とした通路の中でスポットライトにほのかに照らされて都内近郊の美術館や博物館で開催される企画展の告知用駅貼りポスターが掲示されている。

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この荘厳さ。

当然、ポスター達はこれを見て皆に「うお、クール!美術館行こうぜ!」みたいな気に
させるのを目的としてるわけなんでビジュアルには展示の中でも目玉となるコンテンツを選りすぐって掲載している。

つまりその時期に名だたる美術館でお目見えする、ジャンルの枠組みを越えた名作、傑作達が一同にこのストリートに会しているわけなのである。

これはもう立派にミュージアムではないか。時折電車が到着し、人がちょこすか降りて足早に通過してゆく以外は貸し切り状態。じっくりと古今東西アートの粋を鑑賞し、明日へのエナジーとするのだ、しかも無料で。


そんなわけで鑑賞スタート



野田裕示「絵画のかたち/絵画の姿」
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80年代初頭より立体や平面の枠を越えて活躍し、日本の
アートシーンに大きな成果を刻む作家、野田裕示による大胆な画面構成とダイナミックで躍動感溢れる作品「部分」がポスター2枚使いの大画面で楽しめる。


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かっこいい

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「モダン・アート、アメリカン」
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エドワード・ホッパー「日曜日」

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ジョージア・オキーフ「葉のかたち」



そして下を見やると

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モダンアートと国宝の豪華コラボレーション!




「法然と親鸞 ゆかりの名宝」

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(手前)阿弥陀如来立像
(背景)歎異抄
法然の弟子、源智が法然の死を悼んで作らせた仏像。仏師は不明
だがその彫法の特徴から快慶の直弟子の行快作と想定されているらしい。

なんせ印刷物なので立体で鑑賞できないのが惜しいところだが
この貸し切りミュージアムであれば、大胆にトリミングされた上半身の
柔和な中にも凛とした荘厳さをひめたその仏顔を心ゆくまで鑑賞し、
800年の年月に思いを馳せる事が可能なんである。


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隣には国宝「早来迎」も。写真の撮り方(私の)雑だなしかし。



ドニVSドーム兄弟「世紀末、美のかたち」
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ドーム兄弟のガラス工芸がやたらでかい。これはこれで味わい深いではないですか。



こんな流れで鑑賞していると時折現れるこんなポスターもどことなくアートな
趣を醸し出して見えるから不思議だ。



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「青いマフラーの少女」
若々しく、希望に満ちあふれた美しい瞳を見開き、拳を握りしめる少女。
熾烈な受験戦争を突破し、難関大学に入学するという事は夢への
第一歩であると同時に大企業や官僚機構等、制度化され画一化された
社会に取り込まれるかもしれない可能性も孕んでいる。彼女をサポートするかのように
首に巻き付けられたマフラーはそうした管理社会に束縛するための鎖のようにも
見える。

みたいにブリューゲルの寓話画の解説的な妄想を抱くのもオツなものだ。



フェルメールの傑作3作品も世界から集結!

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渋谷のホームに。

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そして、今、見逃してならないのはやはりこれ






ゴヤ!

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着衣のマハ

渋谷のみならず都内のあらゆる駅のホームで巨大ポスターにて露出されており
なんかもう鑑賞した気になっている御仁も多いんではないだろうか。

もちろん美術館に厳粛に展示してある本物には及ぶべくもないだろうが
印刷物にしかできない表現だって存在するのだ。






ゴヤゴヤ
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ウォーホル!(言いすぎ)

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こうなるともう「着衣のマハ」よりもやたらでかい字で繰り返される「ゴヤ」の
うるささを味わうべき。素晴らしいですね、美しく、うるさいです。


まあ、そんなわけで普段、出勤の狭間に映し出される陰鬱な情景に過ぎなかった
駅の降車ホームにこれだけの鑑賞価値が隠されている事がおわかりいただけただろうか。
さあ、目をこらそう、ドアが開いたら、それが合図だ。


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まあ、画像をべたべた貼ってやたら冗長なエントリをして
なんですが、やっぱり本物を見に行った方がいいと思います。











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