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2010年6月20日 - 2010年6月26日

2010年6月23日 (水)

マウンテン登頂記 その2

甘口キウイスパ」と。。

極度の緊張という精神状態は往々にして
人の判断力を鈍らせるもので、

前述したように理解の範囲を超越した盛りと風味のスパを
登頂せにゃならんのだから

こう、なんつーんですか、チェイサーっていうんですか?
このアクを中和せしむるにはグイッとコーヒーの力を
借りた方が良いのではないかと考えたんである。
そもそもここカフェーだし。

で、注文
「甘口キウイスパと」。。

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ウィンナーコーヒー。。

 

なんともクリーミー、かつスゥイーティー。
チェイサーどころかもはやエフェクター。
しかも名古屋のカフェの慣習として、俗情として、コーヒーを
注文するとサービス精神旺盛なサイドメニューが提供されるらしく
ビスケッツとシフォンケーキまで揃いぶみ。

ここに「甘口」キウイスパなんて並んだ日には
一瞥しただけで血糖値は正常な成人男性のそれを軽く2~3倍は上回るで
あろう 眺望となる事はもはや火を見るよりあきらか也。
ラグジュアリーな程に致命的なミステイク。

「やんぬる哉」

まだ始まってもいないのに、はやくも絶望の辞が口をつく。
そして 自らの手によって上げられたハードルの高さを想像する間も
なく「それ」 はやって来た。

ずばん。

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甘口キウイスパ

でかッ!!

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言葉を失う迫力。

頂上に向かう傾斜は比較的なだらかではあるものの
登り口部分にそびえる5つの雪山はこの部屋の熱気と麺の熱さでいつ雪崩を
起こしてもおかしくない状況。
さらに大量の油でぬらんぬらんしているキウイ練り込み(!)の太麺は
いかなるルートを設定しようとも登山者の喉にまとわり付き、喉を通過したとしても
大量の油っけで胸を焼き焦がすに違いない。

極め付けは頂上付近に鎮座ましましているパイナップルのアイス・バーン
生クリームとパイナップルと、ぎとぎとキウイ練り込み麺とサクランボの取り合わせ。
不協和音にも程がある。

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幾多の冒険者達の行く手を遮り。ロマンを打ち砕いて来た大秘境の全貌が
ここに姿を現したのであります。

何分、いや何秒間であったろうか、そのあまりの難所っぷりにアホみたいに口を開けて
ボーとしていたが、俺は何しに名古屋くんだりにやって来たのだ、歴史に名を刻む為じゃあ
なかったのか(えーと念の為、仕事できてます)のぼり始めてもいないのに怖じ気づいてどーする。

男が命を賭するに値する場所。
それが喫茶マウンテン
それが「甘口キウイパスタ」

いざ、行かん。

てな感じでしゃにむにダークグリーンの光沢麺にかぶりついたのであった。

。。。。

。。まずい。

そして。。。ぬるい

キウイ麺(キウイ味全然しません)の放出する地熱により早くもクリームおよびキウイ果汁は 「激ヌル」状態となっており、雪山は早くも半壊状態。 
雪崩となって とろとろと斜面を流れ落ち始め、油と変に絡まり出す。

そんなカオス状態になったスパを口に入れる度に
じんわりと広がる生あたたか〜いクリームの甘みにキウイの酸味がみずっぽく
ジュンと重なる。で、油のこってり感が口内の粘膜を襲う。

瞬く間に肌は紅潮、体温が急激に上昇し、全身から汗が吹き出す。
血糖値が確実にどうにかなっている。ヘモグロビンが悲鳴を上げている。
このまま新陳代謝が極度に活発化し、酸欠状態になれば、頭痛、吐き気、めまい等、
高山病の諸症状を誘発する危険大。

たまらずウィンナーコーヒーを口に含み、それチェイサー。

あまっ!

それでも油のうっとおしさは少なくとも中和。
でもこれと戦うには最低でも黒烏龍茶くらいは欲しいところ。

そして更に萎えさせるのがこの常軌を逸したボリューム。
進んでも進んでもゴールが見えない。
雪中行軍、サルガッソー。いかようにも例えがたい先の見えなさといったら。もう。

 

たまらずビバーク
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ビバークのお友はカート・ヴォネガット。
全然内容が頭入りませんが。

再び登頂を開始し、いつ果てるとも知れぬクリームぎとぎとパスタにいやけが差し、
こちらも雪崩によってクリームまみれになったパイナップルのアイスバーンを
先に攻める。

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これまた難所。
なまあたたか~いパインの甘酸っぱさに生クリームのぬたぬたした甘さ
が襲いかかってくる。カロリーの大洪水は着実に体力を奪い取ってゆく。

小学生の時に水道の塩ビ管を除きこんだら中にいたヘビに襲われた。

サッカーチーム。炎天下の中での猛練習。喉がからからで死にそうになった時に父兄から
差し入れられたのはメロンパンだった。

幼き頃の想い出がだんだん蘇ってきた。走馬灯の始まりである。
かのジョージ・マロリーもヒマラヤのセカンド・ステップで死に彩られたこの幻影を
体験したのだろうか?

パイン攻略を半分で挫折し、走馬灯が遂に高校時代まで進行しながらも
牛歩状態でパスタを攻略。
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もさり

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もっさり

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四肢が麻痺してもう味わかりません。

なんやかんやで
残すはセカンド・ステップのパイン半分と頂上にそびえるチェリーのみ。
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さあ、ゆくぞ!

ビバークしてから。

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ビバークのお友はカート・ヴォネガット
もはや表紙を眺めてるだけ。

いよいよの覚悟を持って山頂へ。
ピッケルを突き立てるようにフォークでパインを貫き、
持てる力を振り絞って口に押し込む。

登頂開始よりおよそ1時間、ついにパインのハードバレーを攻略した
小生は倒れ込むように最後のチェリーをほうばる。

ああ、いろいろあったけどチェリーだけは馬鹿馬鹿しいくらいに純粋にチェリーだ。
うまい。甘酸っぱい。疲労困憊の四肢に染み渡る。

登頂の記念に星条旗とかはないので種と柄?を中央に配置。

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単独登頂成功。

地上の最高峰、孤独と死の幻影に耐え、到達したものにだけが味わえる光景
、充足感。何ごとにも例え様の無い、死にたくなる程の神々しさ。
エベレストから下山途中に滑落死を遂げた、伝説の登山家、ジョージ・マロリー
の気持ちが良くわかる。彼は魂となって、そこから、もっと高い所にその視座を
求めたに違いない。

いやー、一介のサラリーマンなのにマロリーだよ。達成感ばりばりだよ。
でもこちとら「ごっこ」なので神様になる訳にもいかず、
あと席をまってるお客様の為にもとっとと下山しようそうしよう。

とお伝票に手を伸ばすとそこにすっかり忘れていた「あれ」が鎮座ましましていた。
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シフォンケーキ

目をつぶり、なかった事にして店を出ましたがまあ、登頂コンプリート
でいいと思います。

2010年6月20日 (日)

マウンテン登頂記

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ー神々の山嶺(いただき)
もはや説明は不要とも言える、
夢枕 獏の歴史的傑作山岳小説の漫画化。

谷口ジローの精密な筆致は山岳登頂シーンの極限なまでの
緊張感・圧倒的な孤独感をびしびしと紙面に伝え、雄大かつ
重厚な 山岳風景は否応なしに読者を物語の世界に引き込んでゆく。

常人には理解しえないロマンティシズム。そんなものを背負って
登場人物は愚直なまでにたった一人で岩壁に挑む。
いやはや壮絶。凄惨。だけどもたどりついた者だけが目にする
心象風景。「なぜ山に登るのか?」という永遠のテーマに
ひとつの光明を見いだす傑作と言えよう。

そんな事いって腹いっぱい感動したところで
まあ、おいらは常人だし、奥多摩とかで泣きそうになる軟弱者だし
ダウンヒルどころか山ビルも怖いしかんけーねーや。

と日々のたのた暮らしていた訳だが人の運命ってのは本当にわからんもので
まさか今の今になって登るべき「山」と遭遇する事になろうとは
ゆめ思わなかったわけで。


それはここだ。
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ここだ。
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「喫茶 マウンテン」
名古屋が世界に誇る険峰である。
来訪者の数々を迎えるのは見た目、味ともに 珍妙かつ常軌を逸した
ボリュームのフードメニューの数々。


完食のあまりの難しさに店名になぞらえ、この店に向かう事自体を
「登山」。注文を完食する事を「登頂」そしてもっとも高難易度の
「一人で完食する」快挙は「単独登頂」と呼ばれる。
(もちろん残してしまった場合は「遭難」)
詳しくはウィキペディアでどーぞ

http://ja.wikipedia.org/wiki/喫茶マウンテン

時はちょうど昼販時、マウンテンは登山者で溢れておったが

その殆どは家族、恋人、友人同士からなるパーティを組んだ者達
で構成されており、出張の際に立ち寄り、単独登頂を目指す
小生は比較的スムースに登山口まで案内される。

調理カウンターのすぐ手前にカウンターと平行にポツンと置かれた
一人がけ席に着席。
席から狭い通路をはさんで左手にそびえ立つ間口5~6m 
高さ1.5m程のハイカウンターの向こうの調理場には
店主とおぼしきちょび髭のおっさんが眼光銀狼のごとく、
額に汗をしたたらせながら、その装いとは真逆の、
色とりどりで ファンシーなメニューを
盛りつけし、黙々とボーイやウェイトレス達に 提供している。

漆黒のティーシャツを見にまとい、珍妙な盛り付けの皿を持ちながら
席とカウンターを往来するスタッフの視線がびしびしと刺さる。
ぶざまな登山は許されない。

「難所だ。」

途方もない孤独感と緊張感で全身の毛穴から汗じゃない何かが
吹き出してきそうになるのを感じながらメニューブックを
はらりはらりと めくる。

甘口メロンパン風スパ
甘口小倉抹茶スパ。。。。
甘口イチゴスパ。。。。。。。。

ここで言う「スパ」とはやはりスパゲッティーの略なのであろうか?
だとすると「メロンパン風スパ」ってシュールにも程がないか?


その他

スパイス合衆国
ロバライス

ロバライスって。
だとしたらさっきの「スパ」も「スパニエル犬」の略
だったりしても不思議ではない。

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甘口小倉抹茶コッカースパニエル。うわあ。
なんておろおろしながらも登山目標決定。


静かに目を閉じ、黒ティーシャツを呼び止め、オーダーをしたのであった。

「甘口キウイスパ」


続きます。イングリッシュコッカースパニエル。

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